インフル・コロナ・風邪の初期症状を専門医が比較|2025年最新版【受診目安つき】
はじめに
寒さが本格化し、年末の慌ただしさが増す12月は、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、そして一般的な風邪といった呼吸器感染症が同時に流行しやすい時期です。特に、これらの疾患の初期症状は非常に似通っているため、「これはただの風邪だろうか?」「もしかしてインフルエンザやコロナではないか?」と不安に感じる方も多いでしょう。
本記事では、専門医の視点から、それぞれの疾患の初期症状の違いを徹底的に比較し、ご自身やご家族の症状から受診を検討すべき目安や、適切な検査のタイミングについて、2025年版の最新情報に基づいて詳しく解説します。
初期症状だけで見分けにくい理由
インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、そして一般的な風邪(急性上気道炎)は、いずれも発熱、咳、喉の痛み、倦怠感といった共通の症状を示すため、症状が出始めたばかりの初期段階で、これらを正確に判別することは極めて困難です 。
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特に、近年の新型コロナウイルスは変異を繰り返し、その症状は従来の重症化リスクの高いものから、一般的な風邪と区別がつかないほど軽症化する傾向にあります 。また、インフルエンザワクチンや新型コロナワクチン接種の普及により、症状の出方が非典型的になるケースが増え、発熱がない、あるいは軽微な症状で経過するケースも少なくありません。さらに、インフルエンザと新型コロナウイルスの抗原検査は、発症直後ではウイルス量が少なく偽陰性となる可能性があり、検査のタイミングも判別を難しくする一因となっています。
これらの理由から、症状の重さや種類だけで自己判断するのではなく、確定診断のためには医療機関での検査が必要となります。
インフルエンザの特徴(A型・B型)
インフルエンザの最大の特徴は、その急激な発症にあります。インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型がありますが、流行の主体となるのはA型とB型です。A型は高熱と全身症状が強く出やすい一方、B型はA型に比べて発熱の程度が比較的軽いものの、下痢や嘔吐などの消化器症状が強く出ることがあります 。
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- 突然の高熱と悪寒: 38℃以上の高熱が突然現れ、同時に強い悪寒を伴うことが多いです。
- 全身症状の重さ: 倦怠感、関節痛、筋肉痛、頭痛といった全身の症状が非常に強く出ることが特徴です。これらの全身症状が、鼻水や喉の痛みといった局所症状よりも先に、または同時に強く現れます。
- 呼吸器症状: 咳や喉の痛み、鼻水などの呼吸器症状は、発熱からやや遅れて現れる傾向があります。
- 小児の注意点: 小児では、インフルエンザに伴って急性脳症などの重篤な合併症を引き起こすリスクがあり、特に注意が必要です 。
インフルエンザは、発症から48時間以内に抗インフルエンザ薬を服用することで、ウイルスの増殖を抑え、発熱期間の短縮や重症化の予防効果が期待できます。特に、高齢者や基礎疾患を持つ方、乳幼児などは肺炎や脳炎・脳症といった重篤な合併症を引き起こすリスクが高いため、急な高熱と全身の強い倦怠感がある場合は、速やかな受診が推奨されます。治療薬には、内服薬、吸入薬、点滴薬などがあり、患者様の状態や年齢に応じて使い分けられます。
新型コロナ(COVID-19)の特徴
新型コロナウイルス感染症の初期症状は、変異株の流行状況や個人の免疫状態によって非常に多様です。潜伏期間は一般的に2日〜7日とされています 。2025年12月現在、日本ではオミクロン株派生系統が主流となっており、その症状傾向は以前の株とは異なっています。
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- 多様な症状: 発熱、咳、喉の痛み、全身倦怠感、頭痛など、風邪やインフルエンザと共通する症状が幅広く見られます。
- 喉の痛みが主訴となるケース: 近年の流行株では、強い喉の痛みを主訴として受診される方が増えています 。これは、ウイルスが上気道で増殖しやすい性質を持っているためと考えられています。
- 味覚・嗅覚障害: 以前の流行期に特徴的だった味覚・嗅覚障害は、現在の流行株では報告数が減少していますが、依然として初期症状として現れることがあります。
- 症状の持続期間: 軽症であっても、症状が1週間程度と比較的長く続く傾向がある点も特徴の一つです。
症状の出方だけではインフルエンザや風邪との区別は難しいため、感染リスクを考慮し、適切なタイミングでの検査が重要です。新型コロナウイルス感染症も、高齢者や基礎疾患を持つ方では肺炎などの重症化リスクがあります。現在、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬も複数存在しており、重症化リスクの高い方に対しては、医師の判断で早期に投与が検討されます。症状が長引く場合や、急に悪化する場合は、速やかに再受診してください。
一般的な風邪(急性上気道炎)の特徴
一般的な風邪は、主にライノウイルス、アデノウイルス、季節性のコロナウイルスなど、多種多様なウイルスによって引き起こされる、上気道(鼻や喉)の炎症です。原因となるウイルスによって症状の出方に多少の違いはありますが、総じてインフルエンザや新型コロナウイルスに比べて症状は軽度です。
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- 緩やかな発症: 症状は比較的緩やかに始まり、徐々に悪化していく傾向があります。
- 局所症状が主体: 鼻水、鼻づまり、くしゃみ、軽い喉の痛みといった上気道を中心とした症状が主体です。
- 全身症状は軽度: 高熱が出ることは少なく、出ても微熱程度で、インフルエンザのような強い関節痛や筋肉痛、全身の倦怠感はほとんどありません。
風邪の多くは、安静と対症療法で数日〜1週間程度で自然に治癒します。風邪に対する特効薬はありませんが、症状を和らげるための対症療法(解熱鎮痛薬、咳止め、鼻炎薬など)が中心となります。ただし、風邪だと思っていても、症状が長引いたり、中耳炎や副鼻腔炎といった細菌性の合併症を引き起こすこともあるため、症状が改善しない場合は、再度医療機関を受診することが大切です。
初期症状の比較表
インフルエンザ、新型コロナ、風邪の初期症状を、発症の仕方や症状の程度で比較したのが以下の表です。あくまで一般的な傾向であり、個々の症状には差があることにご留意ください。
|
症状項目 |
インフルエンザ |
新型コロナウイルス感染症 |
一般的な風邪 |
|
潜伏期間 |
1〜4日程度 |
2〜7日程度 |
1〜3日程度 |
|
発症の仕方 |
急激(突然の高熱) |
比較的緩やか〜急激 |
緩やか |
|
発熱 |
38℃以上の高熱が多い |
発熱しないケースもあるが、発熱する場合もある |
微熱または発熱しない |
|
全身倦怠感 |
強い(突然の強いだるさ) |
比較的強い〜中程度 |
軽度 |
|
関節・筋肉痛 |
強い |
中程度〜軽度 |
ほとんどない |
|
喉の痛み |
軽度〜中程度 |
強い場合がある |
軽度〜中程度 |
|
鼻水・くしゃみ |
軽度 |
軽度〜中程度 |
強い(主症状となることが多い) |
|
味覚・嗅覚障害 |
まれ |
以前より減少したが、見られることがある |
ほとんどない |
|
症状の持続期間 |
3〜7日程度で軽快 |
軽症でも1週間程度続くことがある |
3〜7日程度で軽快 |
|
治療薬 |
抗インフルエンザ薬あり |
抗ウイルス薬あり(重症化リスク者) |
対症療法のみ |
12月〜1月に実際に多いのはどれ?今年の流行傾向を解説
例年、日本のインフルエンザは12月下旬から翌年2月にかけてピークを迎える傾向にあります 。2025年12月現在、インフルエンザの定点当たり報告数は増加傾向にあり、流行の立ち上がりが早い、あるいは規模が大きいシーズンとなっております 。
一方、新型コロナウイルス感染症は、季節性インフルエンザと同時期に流行の波を繰り返す傾向が見られます。現在の主流株はオミクロン株の派生系統であり、その症状は軽症化しているとはいえ、感染力は依然として高い状態が続いています 。特に年末年始は人の移動や集まる機会が増えるため、両方の感染症が同時に拡大するツインデミックへの警戒が必要です。
当院でも、発熱や喉の痛みを訴えて受診される患者様の中には、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症のどちらも確認される状況です。症状が似ているからこそ、ご自身の症状と流行状況、そして感染リスクを総合的に判断し、適切な行動をとることが重要になります。流行状況は常に変化しているため、最新の情報に注意を払うことが大切です。
こんなときは受診を急いでほしい
初期症状が軽度であっても、以下のような症状が見られる場合は、重症化のリスクや合併症の可能性を考慮し、速やかに医療機関を受診してください。
緊急性の高い危険なサイン
以下の症状は、肺炎や脳症などの重篤な合併症のサインである可能性があります。一刻も早く医療機関を受診してください。
- 呼吸困難や息切れが強い:肩で息をする、呼吸が速い、唇が紫色になっている(チアノーゼ)
- 胸の痛みや圧迫感がある:特に深呼吸や咳をしたときに痛みが強くなる
- 意識障害やけいれんがある:呼びかけへの反応が鈍い、意味不明な言動がある、ぐったりしている
- 水分が摂れず、脱水症状が疑われる:尿量が極端に少ない、皮膚や口の中が乾燥している
重症化リスクの高い方
以下のいずれかに該当する方は、症状が軽くても早めの受診を検討してください。
- 高齢者(65歳以上)
- 基礎疾患(糖尿病、心臓病、慢性呼吸器疾患、腎臓病など)を持つ方
- 妊婦
- 乳幼児(特に生後6ヶ月未満)
- 免疫抑制状態にある方
特に、抗ウイルス薬に関して、インフルエンザは発症から48時間以内、新型コロナは72時間以内の投与が推奨されているものもあり、急な高熱と強い全身症状がある場合は、なるべく早くご相談ください。
症状が長引く・悪化する場合
- 症状が改善せず、高熱が4日以上続く
- 一度解熱した後に再び高熱が出る(再燃)
- 咳や痰がひどくなり、色が濃くなる
これらの場合は、合併症(細菌性肺炎など)を併発している可能性があるため、再受診が必要です。
検査はどのタイミングですべき?(発症何時間後?)
インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の検査は、適切なタイミングで行うことが重要です。この「適切なタイミング」を逃すと、正確な診断ができず、治療開始が遅れる可能性があります。
インフルエンザ検査:発症後12時間〜24時間が目安
インフルエンザの迅速抗原検査は、鼻や喉の奥の粘液に含まれるウイルス量を検出します。体内のウイルス量が十分に増えていない発症直後(6時間以内など)に検査をすると、実際は感染しているにもかかわらず陰性となる偽陰性となる可能性が高くなります 。
そのため、最も適切な検査タイミングは発症から12時間以上24時間以内とされています。発症から48時間以内に抗インフルエンザ薬を服用する必要があるため、このタイミングで正確な診断を受けることが非常に重要です。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査:発症後2日目から9日目
新型コロナウイルス感染症の検査には、主に抗原検査とPCR検査があります。
- 抗原検査(院内検査可能): 比較的短時間で結果が出ますが、インフルエンザと同様にウイルス量が少ない発症初期には偽陰性となる可能性があります。一般的に発症後2日目から9日目が最も陽性になりやすいとされています。
- PCR検査(当院では外注): ウイルスの遺伝子を増幅させて検出するため、抗原検査よりも感度が高く、発症初期でも比較的正確な診断が可能です。ただし、結果が出るまでに時間がかかる場合があります。
当院では、患者様の症状、発症からの時間、重症化リスク、流行状況などを総合的に判断し、インフルエンザと新型コロナウイルスの同時検査を行うことも可能です。自己判断で市販の検査キットを使用する前に、まずは当院にご相談いただくことをお勧めします。
自宅でのセルフケアと周囲に感染させないためのポイント
症状が出た場合、医療機関を受診するまでの間や、軽症で自宅療養を行う際には、以下のセルフケアと感染対策を徹底することが重要です。
自宅でのセルフケア
- 安静と休養: 最も重要なのは、無理をせず体を休めることです。十分な睡眠をとり、体力の回復に努めてください。
- 水分補給: 発熱や下痢などで脱水になりやすいため、水やお茶、経口補水液などでこまめに水分を補給してください。特に、高熱時は脱水が進みやすいため、意識的な水分摂取が不可欠です。
- 栄養補給: 消化の良い食事を摂り、体力を維持しましょう。食欲がない場合は、ゼリー飲料やスープなど、喉ごしの良いものから試してください。
- 室温・湿度管理: 暖かくして安静にできる環境を整え、特に空気が乾燥すると喉の粘膜が傷つきやすくなるため、加湿器などで湿度を50〜60%に保つように心がけてください。
周囲に感染させないためのポイント
- マスクの着用: 症状がある方は、外出時だけでなく、ご家族と接する際にもマスクを着用してください。
- 手洗い・手指消毒: 外出から戻った際や、食事の前、鼻をかんだ後などは、石鹸と流水で丁寧に手洗いをし、アルコール消毒液で手指を消毒しましょう。
- 換気: 部屋の窓を定期的に開け、新鮮な空気を取り込むことで、室内のウイルス濃度を下げる効果が期待できます。1時間に2回以上、数分間の換気が推奨されています。
- 接触感染の予防: ドアノブや電気のスイッチなど、多くの人が触れる場所は、こまめに消毒しましょう。
予防接種による重症化予防
インフルエンザワクチンや新型コロナワクチンは、感染そのものを完全に防ぐものではありませんが、発症を予防する効果や、発症した場合の重症化を予防する効果が報告されています 。特に、流行が本格化する12月を迎える前に接種を完了しておくことが推奨されます。当院でも各種予防接種を受け付けておりますので、ご希望の方はお気軽にご相談ください。
まとめ|不安なときは早めに相談を
インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、一般的な風邪の初期症状は非常に似ており、自己判断は困難です。特に12月は両方の感染症が流行する時期であり、症状の出方だけで判断せず、**「いつもと違う」「症状が重い」**と感じたら、まずは当院にご相談ください。
早期に適切な診断と治療を開始することが、ご自身の回復を早め、周囲への感染拡大を防ぐ最も重要な一歩となります。
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当院では、患者様の症状や流行状況を総合的に判断し、適切な検査と治療を提供しています。不安な症状がある場合は、いつでもご相談ください。
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