【2025年10月29日開始】新しい肺炎球菌ワクチン「キャップバックス®（PCV21）」—1回接種で完結する最新予防法とは？

はじめに：肺炎球菌ワクチンの重要性

肺炎球菌は、肺炎、菌血症、髄膜炎などを引き起こす代表的な細菌であり、特に高齢者や慢性疾患を持つ方では重症化のリスクが高い感染症です。

日本では毎年およそ10万人以上が肺炎で入院し、その多くを肺炎球菌が占めています。したがって、肺炎球菌ワクチンの接種は命を守る上で非常に重要です。

当院では2025年10月29日より、新しい肺炎球菌ワクチン「キャップバックス®筋注シリンジ（PCV21）」の接種を開始いたします。成人では「1回接種で完結」できるという大きな特徴があり、これまで複雑だった接種スケジュールを大幅に簡略化できます。

従来の肺炎球菌ワクチンとその課題

これまで成人向けの肺炎球菌ワクチンには、「ニューモバックス®NP（PPSV23）」と「プレベナー13®／プレベナー20®（PCV13／PCV20）」、そして「バクニュバンス®（PCV15）」などが使用されてきました。

ニューモバックス®NPは広範囲の血清型をカバーする一方で、免疫記憶がつきにくく、数年で抗体が減少するという課題があります。

一方、プレベナー®やバクニュバンス®といった結合型ワクチンは免疫記憶を誘導できる点で優れていますが、PPSV23との「2回接種」が推奨されるなど、接種スケジュールが複雑でした。

キャップバックス®（PCV21）の特徴とメリット

① 1回接種で完結できるシンプルさ

キャップバックス®の最大の特徴は、成人では「1回接種で完結」できる点です。これまでのように結合型ワクチンと多糖体ワクチンを2回に分けて接種する必要がありません。

米国CDC（疾病対策センター）も2025年の推奨スケジュールで、ワクチン未接種の50歳以上の成人にはPCV21（CAPVAXIVE®）の1回接種を推奨しています。

② より広範囲の血清型をカバー

キャップバックス®は21種類の肺炎球菌血清型をカバーしており、これは現時点で最も広範囲です。成人で重症化しやすい型である15A、15C、16F、23A、23B、24F、31、35Bなど8種類を新たに含みます。

これにより、従来のプレベナー®シリーズやニューモバックス®NPでは防ぎきれなかった型の感染予防にも対応可能です。

③ 長く続く免疫効果

キャップバックス®は結合型ワクチンであり、T細胞依存性免疫を誘導することで、免疫記憶が長期間維持されます。

これは多糖体ワクチンの弱点を補うもので、今後長期的な肺炎予防を期待できる構造です。

主要な肺炎球菌ワクチンの比較（2025年時点）

ワクチン名	製造会社	型（価数）	特徴	主な対象者	接種回数・間隔
ニューモバックス®NP（PPSV23）	MSD	23価多糖体	広範囲をカバーするが免疫記憶は弱い	65歳以上の定期接種対象	単回（再接種は原則行わず）
バクニュバンス®（PCV15）	MSD	15価結合型	22F・33Fを追加、免疫記憶を誘導	成人（任意接種）	PPSV23と連続接種（1年以上空ける）
プレベナー20®（PCV20）	ファイザー	20価結合型	PCV13に7型追加（8,10A,11A,12F,15B,22F,33F）	成人（任意接種）	1回接種またはPPSV23後1年以上空けて接種
キャップバックス®（PCV21）	MSD	21価結合型	成人に多い血清型を網羅（新規8型追加）	18歳以上の成人	1回接種。既接種者は最終接種から1年以上空ける

接種対象とおすすめのタイミング

初めて接種する方

６５歳以上の方は接種をご検討ください。

これまで肺炎球菌ワクチンを接種したことがない方は、キャップバックス®を1回接種するだけで予防が完了します。

過去に接種歴のある方

すでにニューモバックス®NP、プレベナー13®、プレベナー20®、またはバクニュバンス®を接種済みの方も、最後の接種から1年以上経過していればキャップバックス®を追加で接種できます。

これは最新の日本呼吸器学会の推奨にも基づくもので、5年以上待つ必要はありません。1年経過していれば、より広範囲な免疫を得られます。

当院での接種案内

接種開始日：2025年10月29日（水）

ワクチン名：キャップバックス®筋注シリンジ（PCV21）

費用：14,300円（税込）

ご希望の方は１度受診いただき、医師との面談後に御予約ください。過去の接種記録をお持ちの方は、接種履歴をご持参いただくとスムーズです。

まとめ：キャップバックス®でシンプルかつ強力な肺炎予防を

キャップバックス®（PCV21）は、従来の複雑なスケジュールを不要にし、1回の接種でより広い範囲をカバーできる新しい肺炎球菌ワクチンです。

高齢者や慢性疾患をお持ちの方はもちろん、まだ肺炎球菌ワクチンを受けていない方にもおすすめです。最新のワクチンで、シンプルかつ確実な予防を始めましょう。

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参照文献

[1] 日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本老年医学会 ほか: 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方（第7版 2025年9月30日）
[2] CDC: Recommended Adult Immunization Schedule, United States, 2025. (CAPVAXIVE®に関する推奨)
[3] MSD: 成人に特化して設計された21価肺炎球菌結合型ワクチン「キャップバックス®」の承認取得について (2025年8月8日)