睡眠時無呼吸症候群（SAS）とは？症状・検査・治療・費用のすべて【2025年版】

睡眠時無呼吸症候群（SAS）の基本と種類

SASとはどんな病気？

「いびきがうるさい」「朝起きても疲れが取れない」—。これらは単なる生活習慣の乱れではなく、睡眠時無呼吸症候群（Sleep Apnea Syndrome: SAS）という病気のサインかもしれません。

SASとは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり（無呼吸）、浅くなったり（低呼吸）することを繰り返す病気です。これにより、体内の酸素濃度が低下し、脳や身体に大きな負担がかかります。

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閉塞性SAS（OSA）と中枢性SAS（CSA）の違い

SASは、その原因によって大きく2種類に分けられます。

種類	原因	特徴
閉塞性SAS (OSA)	舌の付け根などが喉に落ち込み、気道が物理的に塞がることによるもの。	SAS患者のほとんど（約9割）がこのタイプ。大きないびきを伴うことが多い [11]。
中枢性SAS (CSA)	脳からの「呼吸しなさい」という指令が一時的に停止することによるもの。	比較的まれなタイプ。いびきを伴わないことが多い [12]。

当院で主に診療しているのは、患者数の多い閉塞性SAS（OSA）です。

日本における最新の患者数・疫学データ

SASの潜在患者数は、私たちが想像するよりもはるかに多いことが最新の研究で明らかになっています。

2019年の国際的な疫学研究によると、日本国内で中等症以上のSAS患者は約900万人、軽症者を含めると2,200万人に達すると推計されています [1]。これは、成人男性の約20%が中等度以上のSASを抱えている計算になり [2]、まさに「国民病」とも言える状況です。

特に、当院のような呼吸器専門医が常勤するクリニックでは、この病気の早期発見と適切な治療が、患者様の健康寿命を延ばす上で極めて重要だと考えています。

見逃すと危険！SASの代表的な症状と合併症

夜間に起こる症状、日中に出るサイン

SASの症状は、夜間と日中の両方に現れます。

分類	主な症状
夜間の症状	激しいいびき、無呼吸の指摘、夜間に何度も目が覚める、夜間頻尿、寝汗、息苦しさ
日中の症状	強い眠気、倦怠感、集中力の低下、起床時の頭痛、熟睡感の欠如、抑うつ気分

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心血管疾患との強い関連（高血圧・心房細動・脳卒中など）

SASの最も恐ろしい点は、放置することで命に関わる重篤な合併症を引き起こすことです。

無呼吸が起こるたびに、体は酸欠状態になり、それを解消しようと交感神経が興奮します。その結果、血圧が急激に上昇し、心臓と血管に過度な負担がかかり続けます [3]。

この「無呼吸による血圧の乱高下」が、血管の内壁を傷つけ、動脈硬化を進行させます。その結果、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を悪化させるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中、心房細動などの心血管イベントの発症リスクを大幅に高めることがわかっています [4] [5]。

SASを合併している患者様は、合併していない方に比べて、心血管イベントの発症率が上昇するという報告もあります [6]。

自宅でできる検査｜簡易検査と精密検査（PSG）の違い

「病院に行く時間がない」「入院検査は抵抗がある」という方のために、当院では自宅でできる検査を積極的に導入しています。

簡易検査（自宅で行えるスクリーニング方法）

まず、ご自宅で簡単にできる簡易検査を行います。

• 検査内容: 睡眠中の呼吸気流、酸素飽和度（SpO2）、呼吸運動などを測定する小型の機器を装着して寝ていただきます。
• メリット: 普段通りの環境で検査できるため、より実態に近いデータが得られます。

この検査で最も重要な指標が、**AHI（無呼吸低呼吸指数）**です。これは、1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数を示す数値です。

AHIの見方（無呼吸低呼吸指数）

簡易検査の結果、AHIが一定の基準を超えた場合、より詳細な**精密検査（PSG検査）**に進みます。

簡易検査の結果	次のステップ
AHI 40回/時以上	症状が明らかな場合、CPAP治療開始を検討 [7]。
AHI 40回/時未満	**精密検査（PSG）**に進み、確定診断を目指す。

精密検査（PSG）が必要となるケース

簡易検査でAHIが40回/時未満であっても、中程度以上の無呼吸が疑われる検査結果であったり、日中の眠気などの症状が強い場合や、より正確な診断が必要な場合は、PSG検査を行います。PSG検査では、脳波や心電図、筋電図など多くの項目を測定し、睡眠の質や病態を詳細に把握します。

当院では、この精密検査もご自宅で実施できる体制を整えています。 検査機器の取り付けや返却方法についても、専門スタッフが丁寧にご案内しますのでご安心ください。

主な治療法｜CPAPと最新治療（舌下神経刺激・薬物療法）

SASの治療法は、重症度や原因によって異なりますが、中等症以上のSASに対する最も効果的な治療法が**CPAP（シーパップ：持続陽圧呼吸療法）**です。

CPAP療法の仕組み

CPAPは、専用の装置から空気を送り込み、寝ている間に気道が塞がるのを防ぐことで、無呼吸を解消する治療法です。

CPAP以外の最新治療法：手術と薬剤の進化

CPAPが第一選択肢ですが、装着が困難な方や、より根本的な治療を望む方のために、CPAP以外の治療法も進化しています。

舌下神経刺激療法（Inspire）

2021年6月に日本でも保険適用となった新しい治療法です。舌を動かす神経に微弱な電気刺激を与え、睡眠中に気道が塞がるのを防ぎます。CPAPが合わない中等症以上のOSA患者様が対象となります [13]。

今後期待される経口薬（内服薬）

現在、世界中でOSAに対する画期的な内服薬の開発が進められています。日中の眠気を改善する薬（ピトリサントなど）や、呼吸を安定させる薬（スルチアムなど）が研究されており、将来的にCPAPに代わる新たな選択肢となることが期待されています [14] [15]。

CPAPの費用・保険適用について

CPAP治療は、医師の診断に基づき、健康保険が適用されます。

保険適用の基準

簡易検査または精密検査の結果、AHIが一定の基準を満たし、医師が必要と認めた場合。

月々の自己負担額の目安

3割負担の場合、月額約4,500円〜5,500円程度が目安となります [8] [9]。※この費用には、CPAP装置のレンタル料と、月1回の診察・指導管理料が含まれます。

睡眠時無呼吸症候群は専門医の診療で改善できます

睡眠時無呼吸症候群は、単なる睡眠の問題ではなく、全身の健康に関わる重大な疾患です。

当院の検査体制（自宅検査対応）、治療の継続をサポートする仕組み

当院は、呼吸器専門医が常勤しており、SASの診断から治療、そして合併症の管理まで、一貫した専門的なサポートを提供しています。

「いびきを指摘された」「日中の眠気がひどい」など、少しでも気になる症状があれば、まずはご相談ください。ご自宅で完結する検査で、あなたの睡眠と健康を守る第一歩を踏み出しましょう。

👉 ご予約・ご相談はこちらから（オンライン・お電話も可）

 

参考文献

[1] Lancet Respir Med. 2019;7(8):687-698. (日本におけるOSA中等症以上の有病者数に関する国際的な疫学研究)
[2] 睡眠時無呼吸症候群（SAS）の診療ガイドライン2020. (成人男子のOSA中等度以上の頻度に関する記述)
[3] 睡眠時無呼吸症候群が引き起こす動脈硬化と心筋梗塞リスク. (無呼吸による血圧変動と血管への負荷に関する解説)
[4] 睡眠時無呼吸症候群（SAS）が引き起こす17のリスク. (高血圧、心不全、冠動脈疾患との合併率に関する報告)
[5] 睡眠時無呼吸症候群の合併症連鎖。高血圧・糖尿病を招く酸欠. (メタボリックドミノと全身性炎症に関する解説)
[6] 睡眠時無呼吸症候群(SAS)が招く合併症 心臓病(心疾患). (SAS合併群における心血管イベント発症率の上昇に関するスウェーデンの研究)
[7] 睡眠時無呼吸症候の検査・診断・治療 - 宇治市. (簡易検査のAHI基準とCPAP治療開始に関する記述)
[8] CPAP治療の保険適用条件と費用 - おひさま脳神経外科・歯科. (保険適用時の自己負担額の目安に関する記述)
[9] 【睡眠時無呼吸症候群】#7 CPAPの費用・算定のしくみ. (CPAPの月額費用に関する記述)
[10] CPAP療法. (令和6年度診療改定によるオンライン診療の保険適用に関する記述)
[11] 中枢性睡眠時無呼吸症候群の原因と治療法、閉塞性との違い. (閉塞性SASのいびきに関する記述)
[12] 睡眠時無呼吸症候のタイプ別分類とは. (中枢性SASの原因に関する記述)
[13] 【プレスリリース】東京都初 睡眠時無呼吸の最新治療「舌下神経... (舌下神経電気刺激療法の保険適用と適応に関する記述)
[14] 閉塞性睡眠時無呼吸症候群、就寝前スルチアムが有望／Lancet. (スルチアムに関する研究報告)
[15] 閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者を対象としたpitolisantの国内... (ピトリサントに関する研究報告)