はじめに｜エコー検査で「今の体の状態」を知る

「エコー検査」という言葉に馴染みがない方もいらっしゃるかもしれません。当院では、患者様の健康管理をきめ細かくサポートするため、この度、甲状腺・頸動脈・腹部の超音波（エコー）検査を導入いたしました。

当院には、呼吸器科専門医、消化器科医師、アレルギー科専門医、総合内科専門医が常勤しており、各専門医が連携し、多角的な視点から皆様の健康をサポートいたします。

本記事では、初めてエコー検査を受ける方にも分かりやすいよう、検査の基本から、甲状腺・頸動脈・腹部の各部位で何がわかるのか、そして当院の検査の特徴と受診の流れについて、専門医の視点から詳しく解説します。

エコー（超音波検査）とは？痛みや被ばくのない安全な検査

超音波検査（エコー検査）は、人間の耳には聞こえない超音波を利用し、臓器や組織からの反射波を画像化して観察する画像診断法です。

エコー検査の安全性と特徴

特徴	詳細
安全性	放射線を使用しないため、被ばくの心配が一切ありません。妊娠中の方や、小さなお子様でも安心して繰り返し受けていただけます。
非侵襲性	体に検査機器（プローブ）を当てるだけで、注射や採血のような痛みを伴いません。リラックスして受けていただける、体への負担が少ない検査です。
リアルタイム観察	臓器の動きや血流をリアルタイムで観察でき、病変の性状や進行度を詳細に把握するのに役立ちます。

これらの特徴から、エコー検査は、病気の早期発見や経過観察に非常に有用な検査として、内科診療において広く活用されています。

甲状腺エコーで分かること｜首の腫れ・違和感がある方へ

甲状腺は、首の前面にある臓器で、全身の代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しています。

甲状腺エコーでは、主に以下の点を観察し、甲状腺疾患の早期発見に役立てます。

• 甲状腺の大きさ・形：甲状腺全体が腫れていないか（びまん性甲状腺腫）を確認します。
• しこり（結節・腫瘍）の有無と性状：良性または悪性の「しこり」の有無、大きさ、形、内部の構造（充実性か嚢胞性か）を詳細に調べます。
• 炎症の有無：甲状腺炎などの炎症性疾患の有無や程度を評価します。
• 血流の状態：血流の異常は、甲状腺機能の異常や病変の悪性度を判断する上で重要な情報となります。

特に女性に多い甲状腺の病気のスクリーニングとして推奨される検査です。

頸動脈エコーで分かること

頸動脈エコーは、首にある太い血管である頸動脈を超音波で観察し、全身の動脈硬化の進行度を評価する上で非常に重要な検査です。頸動脈の状態は、脳や心臓の血管の状態を反映すると言われています。

頸動脈エコーで評価する主なポイント

評価項目	詳細	意義
IMT（内膜中膜複合体厚）	血管の壁の厚さ（内膜と中膜の厚さ）を測定します。	IMTの肥厚は、動脈硬化の初期段階を示す重要な指標です。
プラークの有無と性状	血管の壁に付着した脂肪などの塊（プラーク）の有無、大きさ、性状（安定性）を観察します。	プラークの存在は、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めます。特に不安定なプラークは注意が必要です。
血流の状態	血管の狭窄（狭くなっている部分）や閉塞の有無、血流速度を測定します。	狭窄や閉塞は、脳への血流不足を引き起こし、脳梗塞の直接的な原因となります。

脂質異常症と頸動脈エコーの意義

脂質異常症（高コレステロール血症、高トリグリセライド血症など）は、動脈硬化の最大の危険因子の一つです。血液中の過剰な脂質が血管壁に蓄積し、プラーク形成を促進します。

日本動脈硬化学会が定める「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」においても、頸動脈エコーによるIMTの測定やプラークの評価は、動脈硬化の進展度を把握し、治療方針を決定するための重要な検査として位置づけられています [1]。

脂質異常症と診断された方、あるいは健康診断で脂質の値に異常を指摘された方は、頸動脈エコーを受けることで、ご自身の血管の状態を正確に把握し、適切な治療や生活習慣の改善につなげることが極めて重要です。

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腹部エコーで分かること

腹部エコーは、お腹の中にある多くの臓器を一度に観察できる、内科診療において最も汎用性の高い検査の一つです。主に以下の臓器を観察し、腫瘍、炎症、結石などの有無を調べます。

臓器	主な観察対象
肝臓	脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝臓がん、のう胞など
胆のう・胆管	胆のうポリープ、胆石、胆のう炎、胆管がんなど
膵臓	膵炎、膵のう胞、膵臓がんなど
腎臓	腎結石、腎のう胞、腎臓がん、水腎症など
脾臓	脾腫（脾臓の腫れ）など
その他	腹部大動脈、膀胱、前立腺（男性）、子宮・卵巣（女性）など

特に消化器科医師が在籍する当院では、腹痛や胃もたれ、健康診断で肝機能異常を指摘された方などに対し、専門的な視点から精度の高い腹部エコー検査を提供いたします。

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エコーを受けたほうが良い症状・きっかけ

以下のような症状や健康診断の結果がある方は、エコー検査を受けることをおすすめします。

• お腹の症状：胃痛、腹痛、胃もたれ、吐き気、背中の痛み、食欲不振、急な体重減少
• 首の症状：首の腫れ、喉の違和感、声のかすれ、または高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を指摘されている方
• 健康診断・人間ドック：肝機能異常（AST/ALT/γ-GTPの高値）、脂質異常、糖尿病、尿潜血、腹部X線検査での異常所見
• 睡眠時無呼吸症候群治療中の方：背景に生活習慣病があることが多い
• その他：ご家族に甲状腺疾患や腹部臓器の病気の既往がある方、定期的な経過観察が必要な方

これらの症状は、甲状腺・頸動脈・腹部エコーによって原因が特定できる可能性があります。「気のせいかな」と自己判断せず、専門医にご相談ください。

検査の流れ（来院→説明→施行→結果）

当院のエコー検査は、患者様にご安心いただくため、以下の流れで実施しております。

• 初診・診察：まず一度ご来院いただき、医師の診察を受けていただきます。症状や既往歴、検査の必要性を確認し、検査部位を決定します。
• 検査予約：診察の結果、エコー検査が必要と判断された場合、検査の予約を行います。当院では、1月から金曜午後にエコー検査枠を設けております。
• 検査当日：予約された日時にご来院ください。検査は、専門の技師が担当します。検査部位にゼリーを塗り、プローブを当てて観察します。検査時間は部位によりますが、通常15分～30分程度です。
• 結果報告：検査当日は検査のみを行い、正式なレポートを作成した後、後日改めて医師から結果をご説明いたします。詳細な画像解析に基づいた正確な診断と、今後の治療方針について十分な時間をかけてご相談いただけます。

【重要なお知らせ】

• エコー検査は保険診療での検査のみ受け付けております。
• 検査を受けるためには、必ず事前の医師の診察と予約が必要です。

当院で行っているエコーの特徴（甲状腺・頸動脈・腹部）

当院のエコー検査は、常勤する専門医体制により、質の高い診断を提供できる点が大きな特徴です。

• 専門医による検査・診断：総合内科専門医、消化器科医師が連携し、特に消化器疾患や動脈硬化の診断において、専門的な知見に基づいた精度の高い検査と診断を行います。
• 甲状腺エコー：甲状腺疾患のスクリーニングを丁寧に行います。
• 頸動脈エコー：動脈硬化の早期発見に特化し、IMTの測定やプラークの性状評価を詳細に行うことで、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の予防に貢献します。
• 腹部エコー：消化器科医師の専門性を活かし、肝臓、胆のう、膵臓といった腹部臓器の微細な病変も見逃さないよう、丁寧に検査を行います。
• 心エコーは取り扱いなし：現状、心臓の検査（心エコー）は行っておりません。ご了承ください。

まとめ｜迷ったら一度ご相談を

超音波（エコー）検査は、痛みや被ばくの心配がなく、体の内側の状態を詳しく知ることができる、非常に有用な検査です。特に頸動脈エコーは、脂質異常症などの生活習慣病をお持ちの方にとって、将来の脳・心臓血管病のリスクを評価するための必須の検査と言えます。

「健康診断で肝臓の数値が悪かった」「コレステロール値が高い」など、少しでも気になる症状や検査結果がある場合は、自己判断せずに、まずは当院の専門医にご相談ください。

当院では、患者様一人ひとりの症状や不安に寄り添い、適切な検査と診断を通じて、皆様の健康維持に貢献したいと考えております。甲状腺、頸動脈、腹部のエコー検査をご希望の方は、まずは一度、診察にお越しください。

当院のエコー検査 概要	詳細
検査開始時期	2026年1月より
検査日時	金曜午後（予約制）
対象検査	甲状腺、頸動脈、腹部エコー
受診方法	医師の診察と予約が必須
診療	保険診療のみ

皆様の健康をサポートするため、スタッフ一同、心よりお待ちしております。

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参考文献

[1] 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版.