メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)
症状
メタボリックシンドローム(メタボ)とは、お腹の中にある「内臓脂肪」がたまりすぎた結果、さまざまな生活習慣病のリスクが高くなっている状態のことです。日本語では「内臓脂肪症候群」とも呼ばれます。
内臓脂肪ってなに?
脂肪には2種類あります:
- 皮下脂肪:皮ふのすぐ下にある脂肪。女性に多い。
- 内臓脂肪:胃や腸のまわりにつく脂肪。男性に多く、健康に悪影響が大きい。
内臓脂肪がたまると、ホルモンのバランスが乱れ、血管や臓器に悪影響を与える物質が増え、病気を引き起こす引き金になります。
メタボの定義(日本の診断基準)
まず、以下の【必須条件】に加えて、3つのうち2つ以上が当てはまると「メタボ」と診断されます。
【必須条件】
- 腹囲(お腹まわり)
- 男性:85cm以上
- 女性:90cm以上
【追加条件(3つのうち2つ以上)】
- 中性脂肪 150mg/dL以上 または HDLコレステロール 40mg/dL未満
- 収縮期血圧 130mmHg以上 または 拡張期血圧 85mmHg以上
- 空腹時血糖 110mg/dL以上
症状はほとんどない
メタボは、見た目や体調だけでは気づきにくい病気です。ほとんどの場合、自覚症状はなく、健診で初めて気づくことが多いです。
放っておくとどうなる?
メタボの状態を放置すると、次のような重大な病気のリスクがぐんと高まります:
- 動脈硬化
- 心筋梗塞・狭心症
- 脳梗塞・脳出血
- 糖尿病の発症・進行
- 慢性腎臓病
メタボはこれらの病気の“入り口”とされており、早めに対策することが将来の健康につながります。
検査、診断
メタボリックシンドロームの診断は、体型や血液検査、血圧測定から行います。特に腹囲測定(お腹の太さ)がとても重要です。
1. 腹囲の測定
- おへその高さで測ります
- 日本では、男性85cm以上・女性90cm以上で内臓脂肪が多いと判断
- 見た目が太っていなくても、内臓脂肪が多い人もいるため注意
2. 血圧測定
- 高血圧の目安:130/85mmHg以上(診察室では140/90以上)
- 家庭でも測定可能(朝・夜2回)
3. 血液検査
- 中性脂肪(トリグリセライド):150mg/dL以上で高値
- HDLコレステロール(善玉):40mg/dL未満で低値
- 空腹時血糖:110mg/dL以上で高血糖傾向
- 必要に応じてHbA1c(過去1〜2か月の平均血糖)も確認
4. 肝機能検査・尿酸値・BMI
- 脂肪肝の有無や、高尿酸血症(痛風)なども関連が深い
- BMI(体格指数)25以上も肥満の目安となります
5. 画像検査(CT、超音波)
- 内臓脂肪の量を正確に調べたい場合は、CT検査で脂肪面積を測定
- 健診の腹部超音波で脂肪肝が見つかることもあり、メタボのサインになります
健診で「メタボ予備軍」と言われたら?
予備軍でも、今のうちに生活習慣を見直せば改善できます。逆に放置すると、高血圧・糖尿病・脂質異常などが進行しやすくなります。
治療
メタボリックシンドロームの治療は、生活習慣の改善が基本です。適切な運動と食事管理で、薬に頼らずに改善できる場合が多いのが特徴です。
食事の見直し(カロリーとバランス)
- 1日3食、規則正しく食べる
- 主食(ご飯・パン)を控えめにし、野菜をしっかり
- 脂肪の多い肉・揚げ物・加工食品は減らす
- 間食やジュース、甘いお菓子は控える
- アルコールは適量を超えないように
※管理栄養士による指導を受けると、続けやすい工夫ができます。
運動の習慣づけ
- ウォーキングなどの有酸素運動を週3〜5回
- 1回30分を目安に、無理せずできる範囲で
- エレベーターより階段、1駅手前で降りて歩くなど、日常の中での「ちょこっと運動」も効果あり
- 筋トレも組み合わせると、代謝アップに効果的
体重のコントロール
- 目標は、半年〜1年で体重の5〜10%減量
- たとえば70kgの人なら、3.5〜7kg減らすだけでも血圧・血糖・脂質が改善されます
禁煙・節酒・ストレス対策
- タバコは血管に悪影響を与え、動脈硬化を進めます
- アルコールは中性脂肪を上げやすく、飲み過ぎ注意
- ストレスもホルモンを乱し、内臓脂肪の増加に関係するため、睡眠やリフレッシュも大切
薬物療法(必要な場合)
- 生活改善で血圧や血糖、脂質が改善しない場合、個別に薬の使用を検討
- ただし、根本的な対策は生活習慣の改善です
ご相談ください
メタボリックシンドロームは、将来の重大な病気の入り口となるサインです。しかし、今なら生活を見直すことで、薬に頼らずに元に戻すことも可能です。
「健診でメタボと言われた」「お腹だけ出てきた」「生活改善を始めたいが何から始めればいいか分からない」など、お悩みがあればお気軽にご相談ください。