非結核性抗酸菌症(ひけっかくせいこうさんきんしょう)
症状
非結核性抗酸菌症(NTM症)とは、「非結核性抗酸菌(NTM=Nontuberculous Mycobacteria)」という菌によって起こる肺の感染症です。名前のとおり、「結核菌とは違う種類の抗酸菌」が原因となっています。
この病気の原因となる菌は、自然界の水や土の中、浴室のシャワーヘッドなど身の回りに存在していることが多く、誰でも吸い込む可能性があります。ただし、実際に病気になるのは一部の人だけです。
以下のような方が発症しやすいとされています:
- 高齢の女性
- やせ型で胸の形が細長い方(特に中年以降の女性)
- 過去に結核や肺の病気(気管支拡張症など)を患ったことがある方
- 慢性の呼吸器疾患(COPD、間質性肺炎など)を持つ方
症状はゆっくりと進行し、次のようなものがあります:
- 長引くせき(乾いた咳または痰のからんだ咳)
- 痰(たん)が増える
- 体重が減ってきた
- 疲れやすい・微熱が続く
- 血痰が出ることもある
初期は風邪や喘息と間違われることも多く、「なんとなく調子が悪い」と感じながら放置されやすい病気です。症状が数か月以上続いている場合には、早めの検査が重要です。
検査、診断
非結核性抗酸菌症を診断するには、複数の検査を組み合わせて慎重に進める必要があります。というのも、この菌は健康な人の痰や肺の中にも「たまたま存在しているだけ」の場合があり、それだけでは病気と診断できないからです。
診断のためには、次の3つの条件を満たすことが必要とされています(日本呼吸器学会ガイドラインより):
【1】症状や画像で病気が疑われること
- 咳、痰、微熱、体重減少などが持続している
- 胸部レントゲンやCTで特徴的な異常(すりガラス影、小さな結節、気管支拡張、空洞など)がみられる
【2】抗酸菌が痰などから検出されること
- 痰や気管支洗浄液から、同じ種類の抗酸菌が2回以上検出される
- または、肺の組織から抗酸菌が検出される
※痰検査だけでなく、気管支鏡(きかんしきょう)という内視鏡を使って肺の奥からサンプルを取ることもあります。
【3】他の病気ではないことが確認されていること
- 結核、肺がん、真菌症など、他の肺の病気としっかり区別されている必要があります
主な検査内容:
- 胸部レントゲン・CT検査:肺に小さな影や空洞、気管支の拡張があるかを確認
- 痰の抗酸菌培養検査:数週間かけて菌を育て、種類を特定(MAC菌が最多)
- PCR検査:菌の種類を迅速に調べる方法
- 血液検査:炎症や栄養状態を確認し、治療計画に役立てます
菌が1回出ただけでは「汚染」や「一時的な菌の存在」の可能性もあるため、複数回の検査と慎重な判断が必要です。
治療
非結核性抗酸菌症の治療は、原則として内服薬による長期的な治療が中心です。ただし、すべての患者がすぐに治療を始めるわけではありません。症状や肺の状態、菌の種類を総合的に判断して「治療するかどうか」を慎重に決めます。
治療を始めるタイミング
- 症状が続いている(せき・痰・体重減少など)
- CTで病変が広がっている
- 痰から菌が繰り返し出ている
- 血痰が出たり、全身状態が悪化している
一方で、症状が軽く病変も小さい場合は、定期的に経過を観察する「経過観察(watchful waiting)」が選ばれることもあります。
治療の方法
治療には、3~4種類の抗菌薬を組み合わせて使います。最も一般的なのはMAC菌(マックきん)というタイプに対する治療で、以下の薬がよく使われます:
- リファンピシン(RFP)
- クラリスロマイシン(CLR)
- エタンブトール(EB)
- 必要に応じてストレプトマイシンなどの注射薬
これらを毎日、または週3回服用し、原則として1年半〜2年近く治療を続けます。これは、菌が非常にしつこく、途中でやめると再発や薬剤耐性菌の原因になるためです。
副作用と注意点
抗菌薬は長期間使うため、肝臓・腎臓の機能や視力・聴力への影響に注意する必要があります。定期的な血液検査や聴力・視力検査を行いながら治療を進めます。
手術療法
ごく一部のケースでは、肺の一部を手術で切除する治療が行われることもあります。たとえば、空洞が限局していて菌が薬で消えにくい場合などです。ただし、手術は限られた施設と条件で行われる専門的な治療です。
生活上の工夫
- 栄養をしっかりとる(体力と免疫を保つ)
- 禁煙:タバコは病気を悪化させます
- 風邪や感染症を避ける:免疫が落ちているときに悪化する可能性があります
ご相談ください
非結核性抗酸菌症はゆっくり進行する慢性の病気ですが、きちんと診断・治療すればコントロール可能な病気です。せきや痰が長引いている、体重が減ってきたといった症状がある方は、ぜひ早めにご相談ください。
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