高血圧症(こうけつあつしょう)
症状
高血圧症とは、血圧が慢性的に高い状態が続く病気です。血圧とは、血液が血管の壁を押す力のことで、正常範囲を超えて高くなると、血管や臓器に負担がかかり、将来の病気の原因になります。
血圧の基準(家庭で測る場合)
- 正常血圧:上(収縮期)120未満 / 下(拡張期)80未満(mmHg)
- 高血圧の基準:上が135以上、または下が85以上
※病院で測ると少し高めに出ることがあります(白衣高血圧)
自覚症状はほとんどなし
- 高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれ、症状がないまま進行することが多いです。
- 進行してから以下のような症状が出ることがあります:
- 頭痛(特に朝)
- めまい、ふらつき
- 肩こり
- 動悸、息切れ
- 目のかすみ
ただし、これらは高血圧以外でも起こるため、症状がなくても血圧の定期的なチェックが大切です。
放置するとどうなる?
高血圧が続くと、次のような重大な病気のリスクが高まります:
- 脳卒中(脳出血・脳梗塞)
- 心筋梗塞・狭心症
- 腎臓の機能低下(腎不全)
- 動脈硬化・大動脈瘤
- 目の血管の障害(眼底出血など)
原因はさまざま
高血圧には2つのタイプがあります:
- 本態性高血圧:原因がはっきりしないが、遺伝・加齢・生活習慣が関係
- 二次性高血圧:腎臓病やホルモン異常、薬の副作用など、原因があるタイプ
多くの人は前者(本態性)で、食事や運動などの生活習慣改善がカギになります。
検査、診断
高血圧症は血圧を測ることで診断できますが、それだけでなく、将来のリスクや合併症の有無を調べるために、さまざまな検査を行います。
1. 血圧測定(基本中の基本)
- 腕にカフを巻いて測定します
- 家庭でも1日2回(朝・夜)測るのが理想
- 連続して高値が続いていれば高血圧と診断されます
2. 問診・身体診察
- 家族歴(親が高血圧か)
- 食事内容、塩分摂取の状況
- 運動の有無、喫煙や飲酒の習慣
- 他の生活習慣病(糖尿病・脂質異常症など)の有無
3. 血液検査
- 腎機能(クレアチニン、eGFRなど)
- 血糖値(糖尿病がないか)
- コレステロール・中性脂肪
- 電解質(ナトリウム・カリウム)
→ ホルモン異常による高血圧の可能性を調べる
4. 尿検査
- たんぱく尿:腎臓の機能が低下していないかチェック
- 糖尿や腎臓病の合併がないかを確認
5. 心電図・心エコー
- 心臓に負担がかかっていないか
- 心肥大(しんひだい)が起きていないか
6. 眼底検査
- 高血圧によって目の奥の血管が傷んでいないかを調べます
7. 二次性高血圧の検査(必要に応じて)
- 腎動脈エコー
- ホルモン検査(副腎ホルモンなど)
- 服用中の薬の確認(ステロイドや痛み止めなど)
高血圧は症状がないまま全身に影響を与える病気なので、検査で体にダメージが出ていないかを把握することがとても大切です。
治療
高血圧の治療では、まず生活習慣の改善が基本になります。必要に応じて薬を使ってコントロールし、合併症を防ぐことが最大の目的です。
生活習慣の改善(すべての人に必要)
- 減塩(げんえん)
- 1日6g未満を目指しましょう(日本人の平均は10g以上)
- 加工食品、インスタント食品、外食に注意
- だしや酢、香辛料を活用すると塩分を減らしても満足感あり
- 体重管理
- 肥満は高血圧の大きなリスク
- BMIが25以上の人は、減量だけで血圧が下がることもあります
- 運動習慣
- 速歩きなどの有酸素運動を週3〜5回以上
- 1回30分を目安に。無理せず続けられる運動を
- 禁煙・節酒
- 喫煙は血管を傷め、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます
- アルコールは1日ビール中瓶1本までが目安
- ストレス管理・睡眠の質向上
- 睡眠不足やイライラも血圧に影響します
- 7時間前後の睡眠と、心の余裕も大切です
薬物療法(医師の判断で開始)
血圧の目標は人によって異なりますが、一般に:
- 140/90 mmHg未満(75歳未満は130/80未満が目標)
- 家庭血圧では5mmHg低めを目指します
主な薬:
種類 | 代表薬・特徴 |
---|---|
ARB/ACE阻害薬 | 血管を広げ、腎臓を守る |
Ca拮抗薬 | 血管をゆるめて血圧を下げる |
利尿薬 | 体の余分な水分・塩分を出す |
β遮断薬 | 脈を落ち着け、心臓の負担を減らす(不整脈にも |
→ 1種類で効果が不十分な場合は、2剤・3剤併用することも一般的です。
治療を継続するコツ
- 「薬でコントロール=成功」ではなく、「薬をやめるのがゴール」ではない
- 途中でやめるとリバウンドや再発の危険
- 定期的な血圧測定と診察が大切
ご相談ください
高血圧症は症状が出にくく、気づかないうちに体にダメージを与える病気です。しかし、早くから正しく対処すれば、将来の重大な病気を防ぐことができます。
「血圧が高めと言われた」「薬を飲むべきか迷っている」「食事や運動で改善したい」など、お悩みの方はお気軽にご相談ください。