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胃食道逆流症(GERD)・逆流性食道炎

症状

胃食道逆流症(GERD)とは、本来は胃の中にとどまるべき胃酸や胃の内容物が食道に逆流し、胸やけや喉の違和感などを引き起こす病気です。

特に、胃酸によって食道の粘膜がただれて炎症を起こした状態を「逆流性食道炎」と呼びます。逆流は誰でも起こることがありますが、それによって日常生活に支障が出るほどの症状が続く状態が病気としての「胃食道逆流症」です。

主な症状
  • 胸やけ:胸のあたりが焼けるように熱く感じる(特に食後や横になるとき)
  • 呑酸(どんさん):酸っぱい液体がのどまで上がってくる感覚
  • のどの違和感・声のかすれ
  • 慢性的な咳や咽頭痛
  • 食べ物がつかえる感じ(嚥下障害)
  • みぞおちの不快感・胃もたれ

これらの症状は、食後・夜間・前かがみの姿勢で悪化することが多く、睡眠障害の原因になることもあります。

なぜ逆流が起こるの?

通常、胃と食道の境目には「下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)」という筋肉があり、逆流を防いでいます。しかし、以下のような理由でその働きが弱まると、胃酸が食道へ逆流しやすくなります。

  • 加齢
  • 肥満・腹圧の上昇(妊娠・ベルトの締めすぎなど)
  • 食べすぎ・早食い
  • 脂肪の多い食事、アルコール、チョコレート、炭酸飲料
  • 胃の動きの低下(胃もたれ)

以前は高齢者に多い病気とされていましたが、最近は若い方にも増加傾向にあり、日本人の生活スタイルの変化(洋食中心、肥満増加など)が影響していると考えられています。

検査、診断

胃食道逆流症の診断は、症状の聞き取り(問診)がとても重要です。典型的な症状がある場合は、検査を行わずに治療を開始する(診断的治療)こともあります。ただし、症状が長引く場合や、他の病気との区別が必要な場合には、内視鏡検査などで確認します。

1. 問診

  • どんな症状がいつからあるか(胸やけ、呑酸、咳など)
  • どんなときに悪化するか(食後、横になるときなど)
  • 食生活や生活習慣の確認(食べる量・時間帯、飲酒など)

この情報だけで、胃食道逆流症が強く疑われることも多いです。

2. 胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)

口または鼻から内視鏡を入れ、食道や胃の中を直接観察します。

  • 食道粘膜の炎症(びらん、潰瘍)の有無を確認
  • 胃の中の異常(胃炎・胃がんなど)も同時にチェック
  • 必要に応じて組織を採取して生検

なお、症状があるのに炎症がないタイプ(非びらん性胃食道逆流症)もあります。この場合も、症状が続けば治療の対象になります。

3. 24時間食道pHモニター検査(専門施設で)

症状はあるのに内視鏡で異常が見つからない場合、胃酸が食道にどのくらい逆流しているかを測る検査を行うこともあります。細い管を鼻から入れて、食道のpH(酸性度)を24時間モニタリングします。

4. バリウム造影検査(胃透視)

内視鏡が苦手な方や、食道の動き・逆流の状態を確認したい場合に行うことがあります。ただし、診断の確定には内視鏡が優先されます。

5. ピロリ菌検査

ピロリ菌除菌後に胃酸の分泌が増え、逆流症状が出ることもあります。胃炎や除菌歴の確認も大切です。

治療

胃食道逆流症の治療は、胃酸の分泌を抑える薬と生活習慣の改善が基本です。多くの方は治療を始めて1〜2週間で症状が改善し、薬を続けることで再発を防ぐことができます。

薬物療法(第一選択)
  • PPI(プロトンポンプ阻害薬)
     胃酸の分泌を強力に抑える薬。現在最もよく使われる薬で、多くの人で症状が改善します。
  • P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)
     PPIよりも早く作用し、持続時間も長い。症状が強い方やPPIで改善しない方に使われます。
  • H2ブロッカー
     軽症の場合や、PPIの代用として使われることがあります。
  • 消化管運動改善薬(ドンペリドンなど)
     胃の動きを良くして、逆流を減らします。
  • 制酸薬・アルギン酸製剤
     胃酸を中和し、粘膜を守る薬。市販薬でも使用されます。
生活習慣の改善(とても大切です)
  • 食後すぐに横にならない(寝るまでに2〜3時間空ける)
  • 少量ずつゆっくり食べる
  • 高脂肪・甘い物・アルコール・炭酸飲料・チョコレートは控える
  • ベルトをきつく締めない、前かがみの姿勢を避ける
  • 頭を高くして寝る(枕やベッドの角度を調整)
外科的治療(まれ)

薬が効かない重症例では、「腹腔鏡下噴門形成術(Nissen法など)」という手術が行われることもあります。ただし、ほとんどの患者さんは内科的治療でコントロール可能です。

ご相談ください

胃食道逆流症はつらいけれども治療可能な病気です。「胸やけが日常化している」「市販薬を長く使っている」「咳や喉の違和感が治らない」などの症状があれば、早めに専門医へご相談ください。検査・治療ともに負担の少ない方法で、症状の改善が期待できます。

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