症状

肺結核（はいけっかく）は、「結核菌（けっかくきん）」という細菌が肺に感染して起こる病気です。かつては「国民病」とも言われ、日本で多くの人が命を落としていた病気ですが、今でも年間1万人以上が発症しています。

肺結核は、発症してもすぐにはっきりした症状が出ないことが多いため、風邪や疲れのせいと勘違いされやすい病気です。症状がゆっくり進行し、気づいたときには悪化していることもあるため、注意が必要です。

主な症状は次のとおりです：

• せきが2週間以上続く
• 痰（たん）が出る（ときに血が混じることも）
• 微熱が続く（とくに夕方に上がりやすい）
• 体がだるい、食欲がない、体重が減る
• 寝汗をかく
• 胸の痛みや息苦しさ（進行した場合）

特に、「せきが長く続く」というのが最も大きなサインです。風邪を引いたあともなかなかせきが止まらず、だんだんと体がだるくなる、体重が減ってきた……というような場合には、肺結核の可能性も考える必要があります。

肺結核は、せきやくしゃみによって人から人へうつることがある感染症です。発病した人が周囲にうつしてしまうこともあるため、早めの診断と治療がとても大切です。

検査、診断

肺結核かどうかを調べるには、結核菌の存在を確認する検査が必要です。まずは医師が症状を聞き取り、次のような検査を組み合わせて診断します。

1. 胸部レントゲン検査

肺に影があるかどうかを確認します。結核では、肺の上の方に白い影が見られることがあります。ただし、影があっても必ずしも結核とは限らないため、他の検査とあわせて判断します。

2. 痰（たん）の検査

痰の中に結核菌がいるかどうかを調べる検査です。以下の方法があります：

• 塗抹検査（とまつけんさ）：顕微鏡で結核菌を直接見る検査。結果がすぐに出ます。
• 培養検査（ばいようけんさ）：痰の中で菌を育てて調べます。結果が出るまで数週間かかりますが、より正確です。
• 核酸増幅検査（PCR検査）：遺伝子レベルで結核菌の有無を調べる、最近普及している検査です。比較的早く結果が出ます。

3. ツベルクリン反応・IGRA（T-SPOTやQFT）検査

体の中に過去に結核菌が入ったことがあるかどうかを調べます。過去の感染やワクチン（BCG）の影響で陽性になることもあるため、あくまで補助的な検査です。

4. CT検査

レントゲンでは分かりにくい場合、より詳細に肺の状態を確認するために行います。小さな影や空洞の有無を詳しく調べることができます。

感染を防ぐために：

肺結核が疑われる場合は、周囲への感染を防ぐために、マスク着用や外出制限が必要になることもあります。また、家族や身近な人への感染が心配される場合は、接触者検診（けっしょくしゃけんしん）という検査を行うことがあります。

肺結核は「早期発見・早期治療」がとても重要です。せきや体調不良が続く場合は、ためらわず検査を受けましょう。

治療

肺結核の治療は、抗結核薬（こうけっかくやく）を毎日きちんと飲み続けることが基本です。治療を始めれば多くの人が完治しますが、薬を途中でやめると菌が残り、再発や耐性菌の原因になってしまいます。

治療の流れ：

治療に使う薬は、基本的に4種類の抗結核薬を組み合わせて使用します。

• リファンピシン（RFP）
• イソニアジド（INH）
• ピラジナミド（PZA）
• エタンブトール（EB）

これらを最初の2か月間は4種類、その後は2〜3種類をさらに4か月間、合計で6か月以上しっかりと飲み続けます。

症状が良くなっても、薬を自己判断でやめると治りきらず、菌が強くなって再発（再燃）することがあります。これを「耐性結核」といい、治療がさらに難しくなるため、必ず医師の指示通りに治療を続けることが必要です。

通院・入院について：

結核は人にうつる感染症のため、治療を始めたばかりの数週間は入院が必要になることもあります。その後、感染力が下がってからは通院で治療を続けていくことが可能です。

服薬支援（DOTS）：

結核は薬の種類が多く、治療期間も長いため、「DOTS（ドッツ）＝服薬支援制度」という仕組みがあります。これは、保健所の担当者などが定期的に服薬状況を確認し、患者さんがきちんと治療を続けられるようサポートする制度です。

ワクチン（BCG）について：

子どものころに受けるBCGワクチンは、重症の結核（結核性髄膜炎や粟粒結核）を予防する効果があります。ただし、大人の肺結核を完全に防ぐわけではないため、大人でも感染や発症のリスクはあります。

ご相談ください

肺結核は、正しく治療すれば治る病気です。しかし、早めに見つけなければ周りの人にうつしてしまう可能性がある感染症です。「せきが長引く」「体重が減った」「微熱が続く」などの症状がある場合は、早めに受診しましょう。