過敏性腸症候群(IBS)
症状
過敏性腸症候群(IBS)とは、腸に病気(炎症やがんなど)がないのに、便通の異常や腹痛・お腹の張りが慢性的に続く病気です。検査では異常が見つからないため、「気のせい」「体質」などと誤解されやすいですが、れっきとした疾患です。
主な症状
- 腹痛:お腹がしくしく痛む。トイレに行くと痛みがやわらぐことが多い。
- 便通異常:
- 下痢型:急にお腹が痛くなり、何度も水のような便が出る。
- 便秘型:お腹が張って便が出にくい。
- 混合型:下痢と便秘をくり返す。
- お腹の張り・ガスがたまりやすい
- トイレが気になって外出が不安になる
学校や仕事中、緊張する場面で症状が出やすく、「テストの前になるとお腹が痛くなる」「通勤途中でトイレに行きたくなる」といった例が典型的です。ストレスや生活習慣の乱れが大きく関係しており、20〜40代の働き盛りや学生に多い傾向があります。
見た目は健康でも、日常生活に支障をきたすことが多く、「仕事を休む」「学校に行けない」「外出ができない」といった悩みにつながることもあります。
検査、診断
過敏性腸症候群の診断には、まずほかの重大な病気(大腸がん、潰瘍性大腸炎、感染性腸炎など)を除外することが重要です。そのうえで、症状の特徴がIBSに当てはまるかどうかを確認します。
1. 問診(症状の聞き取り)
- どのくらい前から症状があるか(通常は数か月以上続く)
- 腹痛と便通の関係(便を出すと楽になる)
- 便の性状(下痢、便秘、両方)
- 症状がストレスや緊張で悪化するか
- 血便、発熱、夜間の症状があるか(これらはIBSではない)
2. 検便・血液検査
- 白血球や炎症反応(CRP)を確認し、感染症や炎症性腸疾患を除外
- 貧血や栄養状態の確認
3. 便中カルプロテクチン検査(必要に応じて)
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)との鑑別に役立つ検査です。IBSではこの値が正常であることが多いです。
4. 腹部エコー・大腸内視鏡検査
40歳以上で初めての症状が出た方や、血便・体重減少・夜間の腹痛がある方には、大腸カメラでがんや腸の病気を除外することがあります。
5. 診断基準(Rome IV基準)
以下のような条件に当てはまる場合、IBSと診断されます:
- 最近3か月間に、月に少なくとも1回以上の腹痛
- その腹痛が、排便と関連している/排便の回数や便の形状に変化を伴う
IBSは検査で「異常がないこと」を確認したうえで、症状と合わせて診断される病気です。ご本人の訴えを丁寧に聞くことが診断の第一歩になります。
治療
過敏性腸症候群の治療では、生活習慣の見直し、薬物療法、ストレスへの対処の3つが柱となります。タイプ(下痢型・便秘型・混合型)によって治療法が異なるため、個別対応が必要です。
生活習慣の見直し
- バランスのよい食事
- 下痢型:冷たいもの・カフェイン・脂肪分・香辛料を控える
- 便秘型:食物繊維・水分をしっかりとる
- アルコールやタバコの制限
- 十分な睡眠と休養
- 適度な運動(ウォーキングなど)
近年注目されているのが「低FODMAP食」です。これは、小腸で吸収されにくい糖質(発酵性オリゴ糖など)を避ける食事法で、症状改善に有効なことがあります。
薬物療法
- 整腸剤(乳酸菌・ビフィズス菌など)
- 下痢型:
- ロペラミド(下痢止め)、ポリカルボフィルカルシウム(便の水分を調整)
- リフキシマ(腸内細菌に働きかける抗菌薬)
- 便秘型:
- マグネシウム製剤、ルビプロストン、リナクロチドなど
- 腹痛・けいれんの改善:
- ブチルスコポラミン、トリメブチンなどの腸の動きを調整する薬
ストレス対策と心療内科的アプローチ
IBSはストレスや不安と深く関係しているため、心理的アプローチも非常に大切です。
- カウンセリング
- 認知行動療法(CBT)
- 抗不安薬や抗うつ薬(少量投与):心と腸はつながっており、脳腸相関(のうちょうそうかん)という考え方に基づいた治療です。
生活サポート
- 学校や職場への相談(遅刻や欠席に配慮が必要な場合も)
- トイレの位置を事前に確認するなどの工夫
- 家族の理解やサポートも重要です
ご相談ください
IBSは命に関わる病気ではありませんが、日常生活の質(QOL)に大きく影響する病気です。正しい診断と治療で、多くの人が症状をコントロールできるようになります。「おなかの悩みで人に言いにくい…」と感じている方も、どうぞ安心してご相談ください。
当院では各種クレジットカード、およびPayPayでの決済が可能です。
クレジットカード:VISA、Mastercard、JCB、Diners Club、American Express、JACCS、Discover
QRコード:PayPay