嘔吐
嘔吐とは?
嘔吐(おうと)とは、胃の中にある内容物が口から外に出てしまう現象です。「気持ち悪い」という吐き気(はきけ)のあとに起こることが多く、多くの場合は体の防御反応の一つです。
私たちの体は、ウイルスや毒素、強いストレスなど「これは体に良くない」と判断したとき、胃の中のものを吐き出すことで守ろうとします。とくに子どもや高齢者では、体調の変化として嘔吐が出やすいことがあります。
嘔吐の種類と主な原因
一時的な嘔吐
- 食べ過ぎ、飲みすぎ
- 車酔い、乗り物酔い
- 強いにおいや嫌な光景などによる反射的な吐き気
- 軽いウイルス性胃腸炎など
→ こうした場合、原因が取り除かれれば短期間で回復します。
繰り返す・長く続く嘔吐
これは注意が必要です。以下のような原因が考えられます。
- 胃腸炎(ウイルス・細菌):吐き気、腹痛、下痢、発熱などが伴います
- 腸閉塞(イレウス):腸の動きが止まったり、詰まってしまったりして吐き気や腹部の膨満が出ます
- 急性虫垂炎(盲腸):初期には吐き気や嘔吐が先に出ることがあります
- 片頭痛・脳の異常:強い頭痛や意識の変化を伴う場合は、脳出血や脳腫瘍などが隠れていることも
- 薬の副作用:鎮痛薬、抗生物質、抗がん剤、鉄剤など
- 妊娠(つわり):妊娠初期に起こることが多いです
- 心因性(ストレス・不安):特に子どもや思春期の方に多く、緊張やプレッシャーからくることもあります
また、「吐いたものの内容」も重要なヒントになります。
- 食べたばかりのものがそのまま出る:胃の動きの低下や機能性の嘔吐
- 黄色い液(胆汁)を吐く:空腹時や十二指腸からの逆流
- 血が混じっている(吐血):胃潰瘍や胃がんなどの可能性
- コーヒーかすのような色の吐物:出血した血液が胃酸で変化した状態
嘔吐は「よくある症状」ではありますが、重い病気のサインであることもあるため、症状が強い、何度も繰り返す、他の症状を伴う場合には注意が必要です。
嘔吐の検査
嘔吐の原因を調べるには、まず「なぜ吐いたのか」を見極めることが大切です。そのために以下のような検査や診察を行います。
【1】問診
- いつから?何回くらい?何を食べた?
- 吐いたものの色・におい・量
- 熱・腹痛・下痢・頭痛・めまいなど他の症状の有無
- 妊娠の可能性、薬の服用状況、ストレスの有無など
【2】診察・視診・腹部の触診
腹部の張り、押して痛い場所、腸の音などを確認します。また、脱水のサイン(皮ふの乾燥、尿量の減少など)も見逃しません。
【3】血液検査
白血球数やCRP(炎症の指標)で感染症の有無を確認。肝機能、腎機能、膵臓酵素、電解質(ナトリウム・カリウム)などを評価し、脱水や内臓の病気が隠れていないか調べます。
【4】尿検査
尿中のケトン体や糖、潜血の有無を調べます。脱水、糖尿病、妊娠などの評価に役立ちます。
【5】画像検査(腹部エコー・X線・CT)
- 腹部エコー:胆石やすい炎、子宮・卵巣の病気などを調べる
- 腹部X線:ガスのたまり具合や腸の動きの有無を確認
- 腹部CT:虫垂炎、腸閉塞、腫瘍など、より詳細に診断できます
【6】胃カメラ(上部内視鏡)
吐いたものに血が混じる、胃痛が強い、吐き気が慢性化している場合には、胃や食道に傷がないか確認するため胃カメラが必要です。
【7】妊娠検査(女性)
妊娠初期のつわりが原因かどうかを調べるために、尿検査や血液検査で妊娠反応を調べます。
検査は症状の重さや年齢、性別、既往歴などに応じて選択します。
嘔吐の治療
嘔吐の治療は、「吐き気や嘔吐そのものをおさえること」と「原因となっている病気を治療すること」が基本です。
【1】対症療法(吐き気止めの使用)
- 制吐薬(吐き気止め):内服薬、坐薬、点滴などがあります。ドンペリドンやメトクロプラミドなどがよく使われます。
- 安静と水分補給:脱水を防ぐことが最優先。吐き気が落ち着いてから、少量ずつ水や経口補水液(OS-1など)をとります。
【2】原因に応じた治療
胃腸炎や食あたり
- 整腸剤や吐き気止めを使いながら、脱水に注意して様子を見ます。
- 細菌感染が疑われるときは抗生物質を使うこともあります。
腸閉塞・虫垂炎など外科的な原因
- 手術や入院治療が必要になることがあります。嘔吐と強い腹痛の組み合わせは要注意です。
胃潰瘍・逆流性食道炎
- 胃酸を抑える薬(PPI、H2ブロッカー)や胃粘膜保護薬を使用します。必要に応じて胃カメラ検査を行います。
妊娠によるつわり
- 軽度なら食事の工夫で様子を見る。水も飲めないような重度の場合は点滴が必要になります。
薬の副作用の場合
- 服用している薬を見直し、中止や変更を検討します。
【3】生活の中での注意点
- 食事は無理にとらず、吐き気が治まってから消化の良いものを少しずつ
- 水分は冷たくて少量ずつが飲みやすい(氷をなめるだけでもOK)
- 強いにおい、油っこい食べ物を避ける
- 無理せず安静を保つ
ご相談ください
嘔吐はさまざまな病気のサインです。単なる「食べすぎ」だけでなく、体の異常を知らせる重要な症状かもしれません。繰り返す、強い、長引く、他の症状を伴う――そんなときは早めにご相談ください。
当院では、丁寧な問診と検査で、原因を見極め、安心して治療を受けられるようサポートしています。