【呼吸器専門医が解説】その喉の痛み、ただの風邪？扁桃炎（溶連菌感染症）の正しい知識と治療法

はじめに：強い喉の痛みと高熱は注意サイン

「喉が痛い」「熱が出た」という症状は、誰にでもよくある体調不良のひとつです。しかしその中には、単なる風邪ではなく、細菌が原因の扁桃炎（溶連菌感染症）が隠れている場合があります。A群β溶血性レンサ球菌による溶連菌感染症は、小児から成人まで幅広く発症し、放置すると合併症を引き起こす可能性があります。

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1. 扁桃炎（溶連菌感染症）とは？

扁桃炎とは、喉の奥にある「扁桃腺」に炎症が起こる病気です。ウイルス感染によるものもありますが、細菌性、特に溶連菌による感染はより注意が必要です。突然の高熱や強い喉の痛みが出て、咳や鼻水がほとんど見られないのが特徴です。

溶連菌はもともと喉や皮膚に存在する常在菌ですが、疲労・免疫低下・ストレスなどの要因で増殖し、扁桃炎を引き起こすことがあります。

主な症状としては、唾を飲み込むのも辛いほどの激しい喉の痛み、38℃以上の発熱、扁桃の白苔、舌のぶつぶつ（苺舌）などがあります。小児では喉の痛みより腹痛や嘔吐を訴えることもあります。

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2. 診断と治療の流れ

当院では、溶連菌迅速検査を用いて10分ほどで診断可能です。陽性の場合は、細菌が原因のため抗生物質（抗菌薬）による治療が必須です。検査感度を考慮して陰性でもしっかりした治療を行う必要があることもあります。主にペニシリン系やセフェム系の薬が使われ、発熱や喉の痛みは1～2日で改善することが多いです。

ただし、症状が軽くなっても自己判断で服用をやめると、再発や合併症を引き起こす可能性があります。医師の指示どおり、基本的には10日間しっかり服薬することが大切です。

抗生物質の飲み切りは、溶連菌感染症の最大のポイントです。中途半端な治療は菌の再増殖や感染拡大の原因となります。

3. 繰り返す場合は扁桃摘出が必要なことも

扁桃炎（溶連菌感染症）は、小さいころから何度も繰り返す方も少なくありません。発熱や喉の痛みを頻繁に繰り返すと、学校や仕事を休まざるを得なくなり、生活の質が下がってしまいます。

その場合には、耳鼻咽喉科で扁桃摘出手術（扁桃腺の切除）を検討することがあります。手術により再発を防げるケースが多く、慢性扁桃炎として繰り返す方には有効な治療法の一つです。当院では必要に応じて専門医療機関をご紹介いたします。

4. 放置してはいけない合併症

溶連菌感染症を治療せずに放置すると、一定期間後に合併症が起こることがあります。代表的なものは次の2つです。

・急性糸球体腎炎：血尿、むくみ、高血圧などを引き起こす腎臓の病気
・リウマチ熱：関節痛や心臓弁膜症を引き起こすことがあり、特に注意が必要です

こうした合併症を予防するためにも、早期の診断と正しい抗生物質治療が欠かせません。

5. 他の感染症との違い

喉の痛みや発熱は、風邪・インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症などでも起こりますが、それぞれ症状の出方や治療方針が異なります。

感染症	原因	主な特徴	治療法
溶連菌感染症	細菌	高熱・強い喉の痛み・白苔	抗生物質（必須）
風邪	ウイルス	喉の痛み・鼻水・咳	対症療法（自然治癒）
インフルエンザ	ウイルス	高熱・全身倦怠感・関節痛	抗インフル薬
コロナ	ウイルス	咳・発熱・嗅覚障害など	対症療法

咳や鼻水がほとんど出ない場合は溶連菌の可能性が高く、逆に咳が強い場合はウイルス性が疑われます。

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6. 受診の目安と感染拡大防止

次のような症状がある場合は、自己判断せずに早めに医療機関を受診してください。
・急に38℃以上の高熱が出た
・唾を飲み込むのも辛い喉の痛みがある
・咳や鼻水が少ないのに発熱が強い
・家族や学校で溶連菌が流行している

溶連菌感染症は人にうつる（飛沫、接触感染）ため、診断後は登園・登校を控える必要があります。社会人に関しては明確な規則はありませんが、抗生物質を飲み始めて24時間経過すれば他人への感染力はほぼなくなるとされています。

7. 呼吸器専門医のいる当院へご相談ください

扁桃炎（溶連菌感染症）は、早期に正しい治療を行えば数日で改善し、重症化や合併症を防ぐことができます。当院では迅速検査による診断から、抗生物質の選択、再発予防の生活指導まで丁寧に行っています。

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